黒木研修了生の堤 将之氏(現・ソニーセミコンダクタソリューションズ (株))が広島大学で取り組んだ研究で応用物理学会シリコン系半導体エレクトロニクス若手奨励賞(名取研二若手奨励賞b)を受賞しました。(2025年1月1日)
応用物理学会シリコン系半導体エレクトロニクス若手奨励賞(名取研二若手奨励賞b)
受賞者:堤 将之 氏(ソニーセミコンダクタソリューションズ (株))
業績:CMOSイメージセンサの画素部にSiC MOSFETを用いることによる放射線耐性向上への貢献
(下記は受賞理由からの引用)
堤将之さんは,広島大学大学院・先進理工学系科学研究科修士課程を修了後,現在はソニーセミコンダクターソリューションズ (株) に所属している.今回の受賞対象は,広島大学で取り組んだ,シリコンカーバイド (SiC) を用いたCMOSイメージセンサに関する研究成果である.
SiCはパワーデバイスの高性能化に向けて,現在活発に研究開発が行われている半導体であるが,ワイドバンドギャップであることの利点として,放射線耐性が格段に向上するという点も期待されている.実際,我が国では福島第一原子力発電所の廃炉対応として,メガグレイ級(グレイGy, 放射線によって物体に与えられたエネルギーを表す単位)の高いガンマ線照射耐性を持つイメージセンサの開発が強く望まれている.
上記の背景のもと,Siを使った場合にはkGy以下でしかなかった放射線耐性を,SiCを用いることでMGy級に向上させたCMOSイメージセンサを実現しようというのが本研究の目的である.
堤さんは,3トランジスタ型,及び4トランジスタ型アクティブピクセル・センサの設計・試作・評価を行った.その研究にはSiCフォトダイオードの設計およびSiC MOSFETの試作なども含まれる.また,イメージング機能実証のため,8×8のピクセルアレイの試作も行った.さらに,試作したピクセル・センサが,2MGyまでのガンマ線照射後においても動作していることを実証した.この値はシリコンを用いて作製された場合に比較して3~4桁高い結果であり,また最近のSiC MOSFETを用いたCMOSイメージセンサの発表値に比べても倍程度高い値である.
以上の研究成果は,放射線耐性が強く求められる環境下でのリアルタイム・イメージングの開発を大きく加速するという社会的観点からはもとより,SiCの応用範囲を大きく拡げるという点からも技術的意味はきわめて大きく,シリコン系半導体エレクトロニクス若手奨励賞(名取研二若手奨励賞b)にまことに相応しいと認められる.
第2回半導体分野将来基金表彰 受賞者:
https://www.jsap.or.jp/handotai-award/recipients/recipients2#ss4
半導体分野将来基金表彰(名取研二賞):
https://www.jsap.or.jp/handotai-award
関連論文:
[1] M. Tsutsumi, T. Meguro, A. Takeyama, T. Ohshima, Y. Tanaka, and S.-I. Kuroki,” Integrated 4H-SiC Photosensors with Active Pixel Sensor-Type Circuits for MGy-Class Radiation Hardened CMOS UV Image Sensor,” IEEE Electron Device Lett., vol. 44, no.1, pp.100 – 103, Jan. 2023, doi: 10.1109/LED.2022.3226494.
https://ieeexplore.ieee.org/document/9969646
[2] T. Meguro, M. Tsutsumi, A. Takeyama, T. Ohshima, Y. Tanaka and S.-I. Kuroki, “4H-SiC 64-pixels CMOS image sensors with 3T/4T-APS arrays,” Appl. Phys. Express, 17, 081005-1 - 081005-5, Aug. 2024, doi: 10.35848/1882-0786/ad665f.
https://iopscience.iop.org/article/10.35848/1882-0786/ad665f/pdf